[Defying Age Labels] 「挑戦し続ける人」たちの記録

Gao Yan(ガオ・イェン) #3

トレイルランニング100kmへの挑戦

October 17, 2024

#03 一人では越えられない壁も、仲間の応援があれば乗り越えられる。 

ーまずは、UTMB Jeju無事の完走おめでとうございます!!

ありがとうございます。休憩を挟まず23:54:06で無事ゴールすることができました。

嬉しかったのは50代のランキングで69位と、100位以内に入れた事です。

ーコースを走ってみた感想はどうでしたか?

UTMBシリーズレースへの挑戦は今回で3回目。これまでもさまざまな大会に出場してきた経験があったため、大きな緊張を感じることはありませんでした。それよりも、世界中から集まったランナーたちと一緒にこのイベントを楽しむことができたことが、とても嬉しかったことです。

UTMB Jejuは韓国最高峰、標高1950mの漢拏山(ハルラサン)の登山口から山頂までを一気に走り抜け、石や岩場で覆われた道や植林帯など「道なき道」に挑むチャレンジングなルートが特徴です。今回は中間地点で高い山が現れるなど、さまざまな課題が目の前に立ちはだかりました。

それでも、コース全体を通じて、国立公園内の豊かな自然に癒されました。自生する植物たちや、火山口を間近で見ることができる絶景の数々は、この大会ならではの特別な体験です。厳しいコースでしたが、その分だけ得られる充実感も大きく、思い出深い一日となりました。

トレイルランニングは距離、累計標高、時間でレースの難易度、レベルを見る事ができますが、今回のUTMBは難易度でいうと3ストーンで、100㎞マラソンの中では中程度のレベルだと思います。

■ストーンとは?

UTMBの「ストーン」は、大会の抽選に必要な資格で、提携レースを完走することで獲得できます。距離や難易度に応じて獲得ストーンが変わり、ストーンが多いほど抽選の当選確率が高くなり、UTMB出場を目指す際の重要な要素となっています。

■累積標高とは?

トレイルランニングの「累計標高」とは、コース全体で上った高さの合計値です。起伏が多いほど累計標高は増え、身体的負担も大きくなります。例えば、累計標高1000メートルはビル約330階分を上るのと同じ計算(1階=約3メートル)。ペース配分や体力が問われる指標です。

ー装備はどのようなものでしたか?

ランニングシューズ、ハイドレーションパック、ランニングパック、ランベスト、ヘッドライトなどです。オリジナルTシャツを会社の皆がプレゼントしてくれたので、着用して参加しました!

ーいちばん心に残ったことは何ですか?
会社のスタッフからの応援です。大会出発前からゴールまで、社長をはじめとするスタッフのみんなが、休みの日にも関わらず、Slackで遠隔からずっと声援を送ってくれました。その励ましの言葉が私を支えてくれたおかげで、24時間以内に完走することができたと思っています。

一人では達成できなかったことも、周囲の支えがあったからこそ成し遂げられると改めて実感しました。応援の力の大きさに、心から感謝しています。

|自分自身と向き合う”Self Talking”が、未来の挑戦の武器になる

ーいちばん大変だったことは何でしたか?

UTMB Jejuの中間地点、50㎞地点を越えた頃、大会前に故障していた右膝の炎症がピークに達しました。このまま続けられるのかという不安が頭をよぎりましたが、「どうやってゴールまでたどり着くか」を考え、自分のフィジカルとマインドを冷静に調整しながら走り続けました。

UTMBは大会経験者も多く完走率は約9割でしたが、1割はリタイアの道を選ぶ過酷なコースでした。今回私が気付いたのは、「Self Talking(自分との対話)」の重要性です。限界が迫る瞬間にこそ、自分を説得し、奮い立たせる対話が、次の一歩を踏み出す力を与えてくれるのだと感じました。

挑戦とは、単に体力や技術を試されるだけでなく、自分自身と向き合い、内面の強さを引き出すプロセスでもあります。今回の経験を通して、「困難をどう乗り越えるか?を考える自分との対話」が、未来の挑戦を支える大切な武器になると実感しました。

ー”Self Talking(自分との対話)”はランニング以外でも必要な考え方ですね。
はい、これは、ランニングだけでなく人生においても重要な考え方だと思います。実は私も、マラソンを始めた当初は10㎞を走るのがやっとでした。しかし、日々の体調管理と、Self Talkingを通じて自分の幅を広げた結果、100㎞という長距離を走れるようになりました。

Self Talkingは、単に自分自身の幅を広げるだけでなく、「耐える力」を身に着けるきっかけにもなります。私の場合、この「耐える力」が心の豊かさにつながり、ランニング以外の場面にも良い影響を及ぼしました。たとえば、日常生活や仕事において、人との付き合いで周囲のサポートができるようになったり、困難な状況において冷静に対処できるようになったりしました。

自分自身と対話し、日々積み重ねていくことの大切さを教えてくれたランニング。その経験は、人生全般でポジティブな変化をもたらす原動力になったと感じています。

ー自分との対話が、新しい可能性の扉を開くのですね。
トレイルランニングは、ギリギリのところまで自分を追い込む競技です。そこで大切なのは、疲れを感じる筋肉や身体の動きを支える外的なケアだけでなく、心や感情、心理的なケアも欠かせません。つまり、”Listen to body(心と身体が発する声に耳を傾ける)”を実践し、内と外、両方の限界を広げていくことが求められます。

私たちが安定を感じる「コンフォートゾーン」から、未知の世界である「アンコンフォートゾーン」へ一歩踏み出すことは、不安やストレスを伴います。しかし、その挑戦こそが成長や自己改革を促し、視野を広げ、多角的に物事を見る力を育んでくれます。

自分の幅を広げることは、ただの自己成長にとどまらず、「Better Self(より良い自分)」から「Better World(より良い世界)」へと目を向けることでもあります。そして、それは社会人として非常に大切な姿勢だと感じています。

私たち人間は、もともと協力し合う生き物です。自分の可能性を広げることで、周りの人々に手を差し伸べ、協力する余裕が生まれます。その結果、良好な人間関係を築くことができ、仕事や生活にも良い影響を与える循環が生まれると思います。

#04へ続く

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ガオ・イェン

Gao Yan

PROFILE ■Gao Yan(ガオ・イェン) 中国、北京出身。54歳。2012年来日。 母国語のほかに日本語と英語を得意とし、法人営業として海外との取引などを担当。 阿部養庵堂薬品には2024年2月よりジョイン。海外営業として、中東や欧州などを担当。 トレラン歴:10年(ロードラン歴:20年) Ultra Trail Mount Fuji 100マイル(日本)、Kodiak 100マイル(アメリカ)、SFMT100マイル(日本)The North Face100キロ(韓国)HK100キロ(香港) 完走など、数々の国内外レースへ出場経験を持つ。 About UTMB “Ultra-Trail du Mont-Blanc(ウルトラトレイル・デュ・モンブラン)”の略称。フランス、スイス、イタリアのアルプス地域で開催される世界最高峰のトレイルランニングイベント。UTMB Trans Jejuは100kmのトレイルを制限時間29時間以内で完走することを目的とする

About UTMB “Ultra-Trail du Mont-Blanc(ウルトラトレイル・デュ・モンブラン)”の略称。フランス、スイス、イタリアのアルプス地域で開催される世界最高峰のトレイルランニングイベント。UTMB Trans Jejuは100kmのトレイルを制限時間29時間以内で完走することを目的とする

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